アトピー性皮膚炎

1.原因

A.免疫のバランスが崩れている。
  
リンパ球のヘルパーT細胞のI型(細菌・ウイルスの対応)と、II型(本来寄生虫に対応)のバランスが逆転している。寄生虫が減ったためか寄生虫以外(ダニ、カビなどアレルギーの原因物質)への反応が増えている。

何故こうなるのかは解明されていないが、アメリカではおもしろい多くの研究結果がでている。


1)1歳までに発熱したことのある子供のほうが、6〜7歳になったときにアレルギー病になる確率が低く、発熱の回数が多いほど、アレルギー病の確立が低い。

2)土遊びをする子供たちは、アレルギー病になる確率が低い。土に生息する細菌や、細菌がつくる毒素に接触する機会は、アレルギーに対する抵抗力をつける。

3)生後1歳までに家に犬を飼っている家庭のほうが、子供がアレルギー病を 発症する確立が明らかに低い。

4)兄弟がいる子供のほうが、アレルギー病になる確率が低い。

5)保育所に通っている子供はアレルギーになる確立が低い。

6)抗生剤を多用するとアレルギーになりやすい。

7)ビフィズス菌と同様の作用を持つ善玉菌を妊娠中に飲ませ、生まれてきた子供にも生後6ヶ月間のませたところ、小児のアレルギーの発症率が激減した。


これらは、インターロイキンとよばれる免疫ホルモンの関係や、感染症を繰り返すことでヘルパーT細胞のI型が強化されること、腸内細菌とアレルギーの関係が示唆されており、大変興味深い内容である。


B.皮膚のバリアー機能が低下している。

皮膚角層のセラミドが十分になく、アレルギーの原因物質が入りやすく、皮膚が乾燥しやすい。炎症を繰り返すと、さらにセラミドが壊れてしまう。

C.活性酸素分解酵素(SOD)の減少。

アトピー性皮膚炎の患者さんでは、余分な活性酸素(細胞を錆びさせる)を除去する分解酵素が少なくなっており、これがアトピーを悪化、治りにくくしているといわれている。

上記のように原因が複雑に絡んでいて、アトピー治療はただステロイドを塗っているだけでは、同じことの繰り返しで治癒しません。


2.治療

A.免疫のバランスをもどす。

1)漢方

漢方薬は、その人の疾患の状態と、体質から決定されます。アトピーを根本的に改善できる場合もあり、治療法の中心となる。皮膚の乾燥を改善したり、炎症(赤くなる)を抑えたりもできます。

2)亜鉛

一部のアトピー患者さんで、体内の亜鉛の量が少なくなり、発症している例が見られる。これは、亜鉛を服用するだけで劇的に回復する。

*亜鉛の服用は、必ず医師の指導を受けてください。

3)腸内細菌叢の改善

前述のアレルギーと腸内細菌の関係から、善玉菌(酪酸菌)を服用することにより、アレルギー症状の改善をみることはよくある。

4)抗アレルギー剤

最近の研究で、IgE(免疫グロブリンE、アトピーの人で高値)
自体を下げたり、白血球の好酸球(アレルギーのとき炎症を起こす)を下げたりする抗アレルギー剤も出てきた。

B.皮膚のバリアーを強化する。

自然のバリアーが低下していることに対応して、保湿・バリアー機能のある軟膏、クリーム、ローションを、頻回に塗ることが非常に大切である。

当院では、漢方の入浴剤を併用してもらい、保湿、痒みの軽減に好評を得ている。炎症を繰り返すと、さらにバリアー機能は低下するので、炎症を起こさせないようにすることも大事。

ふだんの、このバリアー機能の補充がきちんと出来るか、出来ないかが、アトピーの根本的改善に大きく影響すると思われる


C.SODの補充。

皮膚の新陳代謝に、ビタミンH、ビタミンB3,B5が重要であることがわかってきた。

ほかに、活性酸素を除去するのに、ビタミンC、Eが必須である。これらのビタミンを補給してやることが重要。また、必要に応じて、土佐清水病院 丹羽先生のSOD食品、SODを含んだ軟膏を使用することもあります。